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日本人は英語が苦手です

日本人は長年、英語の読み書きは得意ですが、聞く・話す分野においては苦手と言われてきました。
外国語の学習のみならず他の分野においても、その根本的問題を認識し、解決しないことには上達は有り得ないのです。 ただ闇雲に英語での受け答えや沢山の英単語を子供に丸暗記させるだけの今までの英語学習では、何時までたっても流暢に話せる日はきません。
世界的に見ても日本人は英語が苦手ですが、お隣の韓国も実は英語を苦手としています。国際的な英語の試験であるTOEFLの国別ランキングでは日本は常に下位に位置します。韓国は国を挙げて英語学習に取り組み、大分改善されましたが、以前は日本と肩を並べる位置にありました。その理由はなぜでしょう?韓国語(朝鮮語)もそうですが、日本語は言語系統では「アルタイ諸語」に属します。なのでこの両国間の母国語の文の構造は非常に似ています。一方、英語は「インド・ヨーロッパ語族、ゲルマン語派」に属します。オランダ語やドイツ語もその仲間です。では彼らの英語力はどうでしょう?実はとても流暢に英語を話します。その理由はやはり英語と彼らの母国語の文の構造は非常に似ているからです。英語と同じような文の構造をもつ母国語を話す国の人々は比較的に英語が得意なのです。日本人が英語が苦手な理由は、英語と全くかけ離れた文の構造と音声を持っている言語を普段から聞き、話しているためです。よく「日本人はシャイであまり話そうとしないから英語が上達しない」という人もいますがそれは間違いです。日本人は日本語という世界的に見ても特殊な母国語を話すので英語が苦手なのです。そこには論理的な理由があるのです。

日本人はなぜ英語が苦手なの??(1)「周波数(Hz)の違い」



周波数(Hz)とは 1秒間に繰り返される音の振動数の事ですが、人間の耳に聞こえる周波数は16Hz~20,000Hzの範囲内とされており、これ以外は直接聞くことができないと言われています。
振動数が多いほど周波数は高くなり、少ないほど低くなるわけですが、言葉も音を発しますので、各言語にもそれぞれ固有の周波数帯域があります。日本語の周波数は100Hz~1,500Hzなのに対し、英語は2,000Hz~12,000Hzという高周波で話されます。これからもわかるように日本語と英語では交わるところが全くない周波数で話されています。つまり、1000Hz~1500Hzの周波数の範囲内で日本語を普段から聞き、話しをしている日本人が、これだけかけ離れた高周波を持つ英語でいきなり話しかけられても聴覚そのものがその周波数に慣れていないため、まったく聞き取ることができないのです。 同じように日本語の周波数の音で脳に記憶した英単語や英文法では、ネイティブと実際に話す際には全く使いものにはならないのです。

日本人はなぜ英語が苦手なの??(2)「音節の数と種類の違い」

音節とはそのコトバを母国語としている人が聞いて、ひとつの音だと感じる単位のことで、日本語では「あ・い・う・え・お」「か・き・く・け・こ」「が・ぎ・ぐ・げ・ご」「りゃ・りゅ・りょ」等が音節です。俳句の「5・7・5」はつまりは音節の数です。
日本語では「k・m・n・s・t….」の子音と「a・i・u・e・o」の母音の組み合わせ、若しくは母音のみで音節を作り、その数は100ちょっとです。



一方、英語の音節は日本語よりも多種多様で、その数は学者・有識者の意見でも様々で1000や2000、多ければ1万以上とも言われています。そもそも英語は「dog」「good」「stress」など子音(k・m・n・s…)のみでも音をつくる言葉ですし、「f・r・th」など日本語には存在しない音もありますので日本人にとっては聞きなれない音で構成されています。
                
                 
では英語音節の構成はどのようになっているのでしょう?
もちろん日本語と同じように、子音と母音の組み合わせや母音のみで構成されている音節もありますが、英語の場合厄介なのが、母音の前に2つ以上の子音がくる音節や母音の後ろいくつかの子音がくる音節など多種多様にあることです。上に挙げた単語の「stress」を例に挙げてみますと発音記号で
[stres]になります。これは子音+子音+子音+母音+子音で構成されていますが、英語ではこの単語は1音節になります。しかし普段日本語を話している私たちはこの[stres]の発音を日本語の音節の構成すなわち子音と母音の構成に頭の中で置き換えてしまいますので[su・to・re・su」(ス・ト・レ・ス)となり音節は4音節となります。よくあるカタカナ英語のかたちです。日本語にはこういった母音の前に子音がいくつか来る音節や母音の後に連続する子音が来る音節は存在しませんので、それらのまとまりを1音節だと認識するのは困難なのです。ですから英語話者にとっては「stress」はたったの1音節でリズム的には「歯(ハ)」と同じ長さですが、日本人には「ストレス」も「ハブラシ」も同じ長さに感じるのです。
英語はとても早口に聞こえるといった意見をよく耳にしますが、その背景にはこの音節の数・種類の違いがあるのです。聞こえてきた英語を日本語の音節に置き換えてしまう事で会話はどんどん進み、次の単語に追い付けなくなってしまうのです。
英語は英語として捉え、理解しなければいけませんが、これは容易なことではありません。なにせ日本語は英語とかけ離れた音節の構造を持っているために、日本人は無意識的にこのような置き換えを頭の中でしてしまいます。なので英語が早口に聞こえるのです。 


日本人はなぜ英語が苦手なの??(3)「語順(動詞の位置)の違い」

英語と日本語にある「文の構造の違い」は日本人が英語を学習する上でとても大きな違いになります。とくに「動詞の位置の違い」により日本人は英語が苦手です。下の例をご覧下さい。

日本語では、  「私は英語を勉強します。」
英語では、   「 I study English.」

      私は= I   英語= English  ~を勉強します= study

日本語では動詞(述部)「~を勉強します」が文の一番後ろにくるのに対し、英語では主語のすぐ後、若しくは文の中程に動詞がきて、その動作の対象物(例文の場合English)が動詞のうしろにきます。これは大人では簡単に理解できるかもしれませんが、普段日本語を聞いて話している小さな子供たちにとってはとても大きな問題です。
世界の人口の8~9割の人々は英語によく似た文法構造の動詞(述部)が文の前方にある母国語を話します。なので英語圏外の多くの国の人々は英語は比較的に得意なのです。彼らにとって英語を話す際、語順はそのままで、自身の母国語の単語を英語のそれに置き換えるだけで英語が話せます。しかし日本人の場合、頭の中で日本語の単語を英語に置き換え、さらにその単語の順番を入れ換える作業が必要になってきますし、思考の順番まで変更しなければなりません。これは普段から日本語を使い日本語の語順が体に染みついている日本の子供たちにとっては大きな問題になるのです。
あまり英語に慣れていない日本人が瞬時に英語を話すと

                  

と日本語の語順ででてしまいます。日本語を知っている英単語に置き換える事はできますが、体に染みついた日本語によって語順の入れ換えができないパターンです。
昔から日本人は筆記や読解は得意と言われています。学校での英語の授業の賜物でもありますが、筆記や読解の場合はある程度の頭の中で整理する時間、すなわち考える事のできる時間がとれるので比較的に得意なのです。しかし、いざ聞いて話すという事になると、頭の中で考えた事と口からそれを発する事をほぼ同時に行わなければなりません。母国語で日常会話をする際、言葉を発する前に時間を要する人はほぼいません。当たり前のようですが、母国語で話す際、私たち人間は考える事とそれを言葉で発する事をほぼ同時にできる脳を持っているのです。しかし英語を話す際は、日本人は他の国の人々より頭の中で行う作業が多いのにもかかわらず、考えた事と口から発する事をほぼ同時に行わないといけないのです。筆記や読解のように考える時間を逐一とっていてはスムーズな会話はできないのです。
なので、幼少期に英語を素直に受け入れることのできる「英語の神経回路」を構築する必要があるのです。